遠方の友人の来訪を受けた。彼は3棟が連なる高層マンションの管理組合の理事長をしていた。自治会長もしていたのだそうだ。筆者が自治会連合会長であることを知って、自分の経験談を話してくれたが、それは想像を絶することであった。
共用部分の蛍光灯をLEDに取り替えたかった。見積書があって、その値段が高いと思ったそうだ。全部で300余箇所で900万円だったという。当然、修繕積立金から払うことになる。
彼は電気には詳しい。器具全体を取替えなくても、中の回路を一部短絡して、蛍光管型のLEDに取り替えると安くできることに気が付いた。知り合いの電気屋と二人で、それを実行したところ170万円で済んだと言う。
「さぞかし感謝されただろうね。」と言うと、
「とんでもない。何人かに怒鳴り込まれたよ。」
「せっかく高い見積もりを取って、お前にも少し分けてやるはずだったのに、どうしてくれる!このバカヤロー!!」と言ったそうだ。
そんなバカなと思ったが、いろいろな人に聞くと「ありうることだ」と言う人は多い。建設業の人にとっては、常識だそうだ。最近はやりにくくなっているが、昭和の時代は当たり前だったという。呆れてしまうことが、現実にあるのだ。
他に、自治会長がボケていて、会議で決めたことを全て無視した議事録を勝手に作成していたと言う。「他の役員はどうだったのだ?」と聞くと、「みんな黙っている。どうでもいいことに文句を付けて、人間関係が悪くなるのは嫌なんだな。1年我慢すれば終わることだからね。」
これは由々しきことである。そんな自治会などいらない。自由闊達な意見交換と、その結論の実現ができないというのは、民主主義ではない。しかし、彼は言う。
「そのボケた会長は悪人ではないのだ。ただ、30分前の事を忘れるだけなのだ。本人は一所懸命やっているつもりなんだろう。周りが見て見ぬふりをしているのが悪い。」
これは大変難しい問題であるが、これからはこういう人も出てくるだろうことを覚悟しておかねばならない。
友人とは久しぶりの再会だったが、後味の悪い話を聞いてしまった。